東京高等裁判所 昭和35年(う)939号 判決
被告人 趙富傑 外一名
〔抄 録〕
本件控訴の趣意は被告人趙富傑の弁護人柴田睦夫、被告人東城三郎の弁護人西山義次提出の各控訴趣意書のとおりであるからこれを引用し、これに対し当裁判所は次のように判断する。
弁護人柴田睦夫の控訴趣意第一点事実誤認の主張について。
同弁護人は、原判示一の事実に関し被告人趙が他の共犯者の詐欺賭博についてその計画、方法その他につき相談を受けておらず具体的な協力関係はないから共謀共同正犯とは認められないと主張するのであるが、およそ詐欺の共謀ありとするについては共犯者の間において相手方を欺罔し金員を騙取するにつき互に意思の連絡あるを以つて足り必ずしも欺罔の方法、共犯者の役割その他につき具体的な謀議のあつたことを要せず且つ実行行為を分担することを要しないものと解すべきところ、記録によれば被告人趙は他の共犯者と事前にいわゆるイカサマ賭博の方法、各自の役割の決定の謀議に参加せず且つその実行行為に直接関与しなかつたけれども、同被告人が大高武雄及び相被告人松波勇、高城七郎、東城三郎等と暗黙の間に意思を連絡しいわゆるイカサマ賭博をなす企図の下に被害者たるべき張錫浩を同人等に紹介し同人等をして右張から賭金名義で金員を騙取するの実行行為に当らしめ騙取した金員の分与を受けたことを認めることができるので詐欺の共謀ありとするに妨げなく原判決が被告人趙を判示一の詐欺の事実につき共同正犯を以て問擬したのは誠に正当である。
つぎに同弁護人は判示一の賭博の打合が詐欺の共同謀議と認められるとしてもこの共謀はその際の賭博限りで終了しており、被告人趙は原判示二の賭博については事前の通知なく全く無関係であつたから共犯の責任は及ばないと主張するのであるが、原判決挙示の対応証拠を綜合し、かつ右証拠によつて認められるとおり共犯者等が第一回以後引き続いて張錫浩から金を捲き上げようと画策してイカサマ賭博を重ね、被告人趙も判示三、四、五の各賭場に参加し共犯者と行動を共にしており、かつ得た金員の分与を受けていることを勘案すれば判示一から五までの詐欺又は詐欺未遂の犯行は共犯者及び被告人趙の共謀による一貫した行為と認めることができるのであつて、判示二の事実についても被告人趙は詐欺賭博を行うにつき共犯者と意を通じ具体的方法の決定や実行については共犯者にこれを一任していたと認めるのを相当とするので同被告人が判示二の際事前に通知を受けずその実行に関与していなかつたとしても同被告人を詐欺の共同正犯と認むるのにいささかも妨げはないから所論は採用の限りでない。その他記録を精査するも原審の認定につき事実誤認の廉は認められないから論旨は理由がない。
(長谷川 白河 関)